校庭

旧西塩田小学校


 長野県上田市に「さくら国際高等学校」という広域通信制高等学校というのがあります。ここは1996年に廃校になった西塩田小学校の跡地を利用して作られた学校です。学校設置母体は「新教育システム株式会社」というところです。いわゆる「教育特区」に作られた「不登校児童生徒を対象とした新しいタイプの設置による、学習指導要領等の教育課程の基準の特例」「株式会社を学校の設置母体として認める特例」「学校の校地校舎の自己所有要件の緩和」など、文部科学省の「構造改革特区における特例措置」にきっちり当てはめた形で作られた「学校」です。
http://www.mext.go.jp/b_menu/soshiki2/51.htm
教育特区というと英語などを小学生から教えたりするのが有名ですが、こういうのもあるわけですね。ここは東京にサポート校があって、そこと連携をとっているわけです。
http://www.yomiuri.co.jp/nie/note/kyoikukaikaku/2.htm
(教育特区一覧表)
 で、先の日曜日、映画「学校の怪談」の舞台にもなったという旧西塩田小学校の「木造校舎」の写真でもとろうかな、とか軽い気持ちで行ってみました。日曜日ですから「さくら国際高等学校」の職員はおらず、校庭では少年サッカーチームが練習をしていました。広い校庭の半分くらいは雑草がおいしげり、真ん中あたりで少年たちは練習をしていました。(写真)
 写真に写っている校舎は使用していないようで、もう一つの棟と体育館のみ「さくら国際高等学校」で使っているようでした。といっても通信制ですから、スクーリングにくる生徒は年に4回ほどこの校舎に集まるだけなのでしょう。もしかしたら校庭は使わないかもしれません。体育館はきれいに整備され、5月には台湾に修学旅行に行ったようで、ステージには日の丸と台湾の「国旗」が掲げられていました。
 それで、ふと思ったのですが、この学校に限らず「広域通信制」などは「校庭」ははじめからない場合があるのではないかと疑っています。これまで「校庭」は学校にとって必須のものだと考えていましたが、どうも法的に義務づけられてはいないようですね。山形県立霞城学園高等学校(1部(午前)、2I部(午後)、3部(夜間)の三部からなる単位制の高等学校)は山形駅西口官民複合ビルの5階から9階にあって体育館はあるようですが、校庭はないんですね。
http://www4.ocn.ne.jp/~jcp-shin/hotnews85.htm
 これですこし了解できたのが枝川裁判です。(江東区枝川にある東京朝鮮第2初級学校の校舎の一部を取り壊して、都有地である校地の一部約4,000平方メートルを返還することと、1990年4月1日以降の使用相当損害金として約4億円の支払いを求めて東京都が提訴した裁判)
http://kinohana.la.coocan.jp/edagawatop.htm
 朝鮮学校だから、各種学校だから、東京都はこれを狙い撃ちにしたのでしょうが、校庭を取り上げても「教育法規上」問題ない、ということが東京都を「支援」したのでしょう。
 そうだとすると、「校庭」を「学校」イメージと重ね合わせる習性は、何十年か後にはなくなってくるかもしれません。休み時間や昼休みに、校庭に子どもたちがあふれることもなくなり、校庭は「競技場」として特化され、休みの日には地域のスポーツクラブに開放され、学校の部活動も「社会体育」としてアウトソーシングされた後、人びとは、昔、学校には「校庭」という広い「庭」があって、そこで子どもたちが遊び回っていたんだよ、と言い伝えるだけになるかもしれません。