民間委託

警察常務もだんだん民間委託

 ある市の市報(2007年7月)に「給食調理業務の民間委託が始まります」という記事が載っています。それによると市内の小学校給食の年間必要経費は約8億円で、そのうち「調理員に係わる人件費等」が約6億円だと円グラフで説明し、委託化によって1校あたりの「人件費等 年間約2,400万円」が1,600万円になり、年間約800万円コスト削減になると棒グラフで説明しています。
 コラムには「節減経費はどう使うの?」という項目があります。答えは「より安全でおいしい給食を提供するため、より細かいアレルギー対応など、給食環境の向上などに使用したいと考えています。」というものです。
 あれ? これでは経費節減にならないのでは?? まあ、節減の一部を使うということでしょうけど。
 給食については下記に書きましたが、
 http://d.hatena.ne.jp/deschoolman/20070619
「学校給食法」によれば、
http://www.houko.com/00/01/S29/160.HTM
義務教育諸学校での給食はその設置者の努力義務なんですね。ですから中学校などでは実施していないところもあるわけです。小学校でも実施しなくても法律違反にはならない。とすると、定時制高校での給食が民間委託化のあとの給食をとる生徒の激減、やがて廃止(あるいは簡易給食化)という予想されるルートは小学校でも起こりえます。
 給食費の未納問題、好き嫌いの多い子ども、「給食費を払っているのだからイタダキマスをいわなくてもいい」とか「うちの子は今月は10回しか食べてないので給食費はその分だけ払う」などというモンスターペアレンツの登場は、学校経験のうち大きな部分を占める給食経験を将来危うくするものかもしれません。もっとも、給食費未納問題はそのために意図的に出されてきているのかもしれませんが。
 給食ばかりではなく、高校の事務職員や校務員が減員されているのも、業務の一部が役務として外部委託されたり、官庁のネット環境を外部に委託して作らせ運用もまかせるなどで人員を減らせる、という判断です。ですから、人件費削減というのは「民間委託」の主たる目的です。これは民間業者で働く労働者は低賃金でいい、ということにも繋がりましょう。しかしこうした裏の読みはしないのです。自分を「労働者」と考えるのではなく「消費者」「サービスの受益者」として考えるように文化全体がセットされているからです。この民間委託宣伝の市報記事は、民間に委託することでサービスが向上するということを強調しているのはこのためです。この市報をよんだ市民や親は、「高賃金」公務員のリストラと自分たちへのサービスの向上という2点をうけとり、給食の民間委託を肯定するという構造になっています。
 公共図書館の職員も民間の図書整理会社が雇う低賃金のアルバイトパートに置き換えられていきます。
http://www.fureai.or.jp/~bassotto/l_bbs01/c-board.cgi?cmd=one;no=374;id=
 大学図書館などでは職員の雇用はどうなっているのでしょうか、ここでも民間委託が侵入しつつあるようです。
株式会社北九州施設協会から派遣された経営コンサルタント北九州市立戸畑図書館の館長だ。運営ばかりか、建設段階から民間に任せるPFI方式を全国で初めて採ったのは、昨年10月に新装開館した三重県桑名市立中央図書館だ。「サービスがよければ、利用者にとっては実施主体は関係ない」と桑名市教委の生涯学習課長は言い切る。と下記にはある。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20050922us41.htm
 イラクアメリカ軍のなかには民営軍隊も多いらしいし、刑務所も各国で民営化、日本でも山口・美祢市で警備や職業訓練、清掃など運営の大半を民間に委託するPFI方式を取り入れた刑務所が開所しています。
http://bouron.blog.ocn.ne.jp/touma/2007/05/post_bb1f.html
 ひるがえって考えてみれば、私立の小学校中学校などは、国家事業だった教育の「民間委託」かもしれません。学校は「民間委託」の最先端だったのかねー。ええ、保育所の民間委託なんて遅い遅い。そのうち学校教員も塾などの民間会社が「優秀な」先生を「低賃金で」「派遣」してくれるようになるかも。教員志願者の若者諸君、教員免許をとったら塾に就職するほうがいいかも。

写真はhttp://www.pref.okayama.jp/kenkei/koutu/sido/chusha/03_itaku/itaku_top.htmlより